インボイスの無い飲食店での接待は経費にならない?!
こんにちは、会計士の岡内です。
さて、インボイスも始まって3週間程が経ちました。現実世界では色々と面倒なことになっています。
特に役員や従業員の方で、交際費として飲食店をご利用される方がお店選びに手間がかかるというような話しを聞きます。
今回は、その件について書きたいと思います。
10月1日からインボイス制度が始まった
皆さんご存じの通り、令和5年10月1日からインボイス制度がスタートしました。これは、インボイス登録番号が無いと、買手(お客様)が消費税上不利益を被るという制度になります。この目的は、免税事業者という消費税をお客様から預かっても納税しなくて良いという事業者を極力無くすためでした。
報道でも言われていますが、この免税事業者から消費税を年間数千億円徴収するために、毎年数兆円のコストを民間に負担させたなど言われていますね。民間からすれば、ただただ生産性向上の妨げになっただけの制度です。
インボイス登録番号の無い飲食店での接待は経費にならない?!
さて、本題はここからなのですが、このインボイス登録番号が無いと、接待交際費として経費申請を認めないという会社がチラホラ増えています。これは、インボイス登録番号の無い飲食店での経費は、消費税法上並びに法人税法上不利益を被るからです。
例えば、税抜経理している会社において、飲食店で毎回5,500円(税込)のコースを頼んだとします。しかし、インボイス制度開始後、この飲食店がインボイス登録番号を取っていなかったとすると、法人における交際費の損金不算入の計算で、この5,500円は交際費から除外できません。
なぜなら、消費税500円を本体価格に含めて5,000円基準の判定をしなくてはならないからです。経過措置として、今は消費税のうち8割は控除が認められるので、上記の例だと5,100円が接待交際費の本体価格になります。5,000円を超えているので、交際費の損金不算入の対象になり、会社の法人税の負担が増えることにつながります。
また、インボイス前であれば、消費税500円を控除することが出来たのですが、この例では400円しか控除できないので100円を会社が負担しなければなりません。会社にとっては単純にコストアップになります。
また、経理サイドでも、会計ソフトなどに免税事業者である旨のデータ入力が必要となり、手間が増えます。
このように、インボイス登録番号の無い飲食店を利用するのは、会社にとって不利益しか無いわけです。この結果として、インボイス登録番号の無い飲食店での接待交際費や会議費等は経費精算では一切認めないというルールを決めた会社が増えているわけです。
5,392円(税込)が利用限度額
現状、接待交際費から除かれる飲食費の基準は5,000円です。インボイス制度開始後、インボイス登録番号の無い飲食店での接待交際費の限度額は、税抜経理の会社では税込5,392円(5,392-5,392÷1.1×0.1×0.8)です。これは経過措置によるもので、令和8年9月30日まではこの金額です。ただし、ひょっとすると5,000円基準の上限値が上がるかもしれませんし、経過措置自体が変更・延長されるかもしれません。(※2023年の税制改正大綱で、1万円以下に拡大されました。(2023年12月15日更新))