コロナ関連の融資はどれが有利か?
こんにちは。会計士の岡内です。
コロナショックで大きな影響が各方面で出ています。緊急事態宣言の延長の是非も、報道ではGW中に決定するということらしいですし、全く先が見通せないという方も多いのではないでしょうか?
現在、政府の経済対策の一環として、事業者への資金繰り支援が実施されています。
今回は、今現在の支援内容を比較して、どれが使い勝手が良いなどを検討したいと思います。
地域の中小事業者が利用しやすい代表的なものはコレ
まず、融資それ自体は各金融機関や自治体の制度融資などによってメニューは様々です。
そこで、今回は地域の事業者さんが利用しやすいであろう代表的なものをいくつかピックアップして、それについて検討していきたいと思います。
今回検討するのは、
日本政策金融公庫(略称:日本公庫)の『新型コロナウイルス感染症特別貸付』
商工組合中央金庫(略称:商工中金)の『新型コロナウイルス感染症特別貸付(中小企業向け制度)』
信金などの民間金融機関を用いた『セーフティネット(SN)保証4号』、『セーフティネット(SN)保証5号』、『危機関連保証』
以上の3つです。
それでは、検討していきましょう。
日本公庫は窓口が複数あり、それぞれで上限額や利率が異なるため要注意
なぜ金利などの条件が異なるかの説明は後述するとして、借入条件は以下の通りです。
利率:基準利率(現状:1.36%(国民生活)又は1.11%(中小企業))、ただし、当初3年間は▲0.9%
返済期間:15年又は20年(据置5年以内含む)
利子補給:一定の条件のもと利子全額を補助(上限あり)
色々と報道されていますが、やはり日本公庫の融資が最初に思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか?
この条件ですが、当初3年間に関しては、基準利率から0.9%引いてくれるので、今だと0.46%又は0.21%となり、かなり有利な利率です。しかも、売上高が15%や20%以上減少しているなどの条件を満たせば、この3年間は実質無利子化されます。利子補給が入るためです。
これだけ見ると、凄く有利にも思えるのですが、問題は3年経過後です。利率▲0.9%も利子補給も当初の3年間のみです。
これを過ぎると基準金利に戻るし利息も負担しないといけません。こうなると、普通に信金などから借りている方が安上がりという事業者さんも多いはずです。ここを考慮した上で決めないと、意外と割高な借入れになるかもしれません。
繰上返済すれば良いとお考えの方もいらっしゃると思いますが、危機管理の基本として、状況が悪化して繰上返済出来ない状況を前提に考えるべきです。繰上返済する余裕が見越せるなら、そもそも借り入れの必要は無いはずですから。
それでは、ここからはなぜ1つの金融機関に窓口がいくつもあって借入条件が異なるのかの説明をします。その理由は、日本公庫には部門が3つあるからです。その3つとは、『国民生活事業』、『中小企業事業』、『農林水産事業』です。通常、前者2つが皆さんと馴染みのある部門になります。
そして、それぞれが別部門なので窓口が異なり、別部門ゆえに借入れの上限額や利率も異なっているというわけです。
なぜこんなことになっているかというと、日本公庫は、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫の3つの金融機関が統合して出来た金融機関だからです。そして、それぞれの金融機関がそのまま事業部門になってしまったのです。未だに日本公庫のことを『国金(国民生活金融公庫)』と呼ばれる方が多いのも、当時の名残というわけです。
商工中金の中身は日本公庫の中小企業事業と実質同じ
次に、商工中金の『新型コロナウイルス感染症特別貸付(中小企業向け制度)』についてですが、これの中身は実質的に日本公庫の中小企業事業と同一条件です。
一応、融資先の財務状況等を考慮して所定利率での貸付けになるのですが、利子補給を通じて日本公庫と同一条件に持っていく流れになっています。そのため、日本公庫の中小企業事業と取引があれば、どっちを選んでも一緒です。
ただ、新規で商工中金と取引を開始したいとなると手間がかかります。商工中金は商工中金と関わりのある組合や、その組合の構成員に融資を行っているためです。融資を受ける資格があるかどうかを最初に調べないといけないので、少しハードルが高いです。
民間金融機関のSN4号、SN5号、危機関連保証は今後有利になる
セーフティネット保証(SN)4号、セーフティネット(SN)保証5号、危機関連保証に関してですが、これは今後、有利な条件になることが予定されています。
今までなら利息は普通にかかるし、保証料も必要でした。しかし、政策として民間の金融機関からも都道府県の制度融資を介して実質無利子化、条件次第で保証料減免で借りられるようにしようということになりました。
私の住んでいる兵庫県も、5月からこの新しい制度が開始される予定です。今週中に県議会に諮られて採決される見通しです。制度融資の条件は以下のとおりです。なお、兵庫県以外の都道府県は、内容が異なる場合があります。
名称:新型コロナウイルス感染症対応資金
対象者:セーフティネット保証(4号、5号)、危機関連保証の認定を取得した中小企業者、個人事業主
利率:当初3年間0%(4年目以降 0.7%)ただし3年間0%は条件あり
信用保証料:通常0.85%・1.05%から減免(ゼロ又は1/2)あり
限度額:3,000万円
期間:10年(据置5年)以内
これだけ見ると、3,000万円まで3年間は無利子で信用保証料もゼロになるかもという中々の好条件です。しかも、3年経過後も利率は0.7%ですので、決して悪い条件ではありません。場合によっては、現在のプロパー融資より有利という方もいるはずです。ただ、無利息も信用保証料の減免も条件があります。
この条件ですが、SN4号又は危機関連保証の認定が取れれば、それがそのまま条件達成になります。しかし、SN5号に関しては、場合によっては保証料が半分になるだけということになります。
これは、兵庫県の制度融資の減免条件が、
- 個人事業主且つ小規模事業者は売上高5%減で3年無利子且つ保証料ゼロ
- それ以外の中小事業者は売上高15%以上減で3年無利子且つ保証料ゼロ
- 同上の中小事業者で売上高5%以上15%未満減は保証料半額免除のみ
となっているからです。
そうです。個人事業主且つ小規模事業者以外の事業者さんは15%減のハードルがあるのです。
で、このハードルですが、SN4号と危機関連保証はそもそも認定要件の一つに売上高20%減や15%減が入っているので、認定された瞬間に3年間無利子と保証料ゼロが決まります。
逆にSN5号は売上高5%減が認定要件の一つになっているので、売上高5%以上15%未満減少でも認定が取れてしまうのです。そのため、この点は注意が必要です。
ちなみに、SN4号の認定要件は以下の通りです。
- 申請者が、下記の指定を受けた地域において1年間以上継続して事業を行っていること。
- 下記の指定を受けた災害等の発生に起因して、その事業に係る当該災害等の影響を受けた後、原則として最近1か月間の売上高又は販売数量(建設業にあっては、完成工事高又は受注残高。以下「売上高等」という。)が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること。
なお、SN4号の指定地域は、今回のコロナは全都道府県です。
そして、SN5号はこれです。
(イ)指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少の中小企業者
(ロ)指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者
指定業種はリスト化されていますので、ご自身が指定されているか確認してください。まぁ、ほぼ指定されているとは思います。
最後に、危機関連保証は次の通りです。
- 金融取引に支障を来しており、金融取引の正常化を図るために資金調達を必要としている。
- 下記の認定案件に起因して、原則として、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれる。
みなさんはどれを使いますか?
以上、比較検討してみました。並べてみると、売上高等の条件次第では兵庫県の制度融資が条件的には有利かな~という感じです。ただし、これから経済状況がもっと悪くなってしまい、より低利な融資制度が出てくるかもしれません。また、状況によっては、日本公庫が一番使い勝手が良かったという場合もありえます。これは、金額的に有利不利のみを見るか、付き合う担当者を見るかどうか、という点に似ていますね。
ここは、『総合的にこれが一番良さそうだ』、という経営者としての経営判断を行ってください。
今回、皆さんが資金繰りでどこから調達するかの経営判断に、有用な情報が提供出来たとすればうれしい限りです。