株式トークンはあり得ない
こんにちは、会計士の岡内です。
GW中にDeFiについて勉強していたのですが、その際、上場株式を仮想通貨にして売買するという記事を見つけたので、それについて個人的に考察してみました。
仮想通貨の大手取引所が上場株式をトークン化
ブルームバーグの記事に、大手取引所のバイナンスがテスラ株をトークンにして流通させるというのが載っていました。テスラ株の現物を裏付け資産として、トークンを自社で取引可能な形にしたようです。
今のところ、テスラの他にアップル、マイクロソフト、マイクロストラテジー、コインベースの5銘柄がトークン化されてバイナンスで取引されているようです。
バイナンスのトークンはETFじゃないのか?
投資の世界で有名なETFは、日本語では上場投資信託と呼ばれます。投資信託は、投資家から資金を集めて何らかのテーマに沿って運用を行います。テーマはTOPIX連動だとか銀行セクターとか色々あります。
投資家は資金を差し出すのと引き換えに、投資信託から生ずる利益や時価で解約する権利を得ることになります。ETFは、この権利を取引所で売買できる形にした金融商品です。当然ですが、この権利には株式や債券といった現物資産が価値の裏付けとして存在しています。
ここで、バイナンスの株式トークンはどうでしょうか。
このトークンは、現物株式を裏付け資産として、配当などの金銭的利益を得られる権利そのものになります。
中身はETFと同じにしか見えません。議決権が認められないのもETFと同じです。テーマが個別株の特定の会社に絞られているだけです。
金融当局からは確実に注視される
中身がETFと同じということであれば、各国の金融当局はこのトークンをETFとして取扱うべきという考えになるはずです。そうであるならば、ETFと同じ開示規制などのルールに則ってもらう必要があります。逆にこれを認めてしまえば、証券業界からそんなものは認めないという声が必ず出るはずです。何故なら、彼らは各国の規制に従ってETFを取扱っているからです。なんなら、ETFを組成している側もたくさんいます。これを認めれば、規制の抜け穴になってしまい、ルールを守る方がバカということになります。
従って、バイナンスの株式トークンは各国の金融当局から注視されるはずです。
バイナンスが欲しいのは投資先の議決権?
ETFは現物株式の裏付けがあり、そこから得られる配当などの利益をETF保有者は得られます。バイナンスのトークンも同様です。しかし、どちらも投資先の議決権の行使は出来ません。では、誰が議決権を行使するかと言うと、運用管理者が行います。すなわちETF化した人、トークン化した人です。
ETFであれば、ETF保有者の利益を最大化するために議決権行使をすることが運用管理者には求められています。当たり前ですね。
しかし、バイナンスはここに目を付けたのかもしれません。何故なら、他人のお金で株式を買って、リスク無く投資先に口出しする権利を得られるからです。しかも、バイナンスの利益=トークン保有者を含めたバイナンスユーザーの利益という考え方も出来ます。
バイナンスのトークン化銘柄は、いわゆるITの有名な会社です。そして、これらの企業はバイナンスのビジネスと相性が良いように私は感じます。
株式のトークン化は、バイナンスにとっては合理的かもしれません。
株式トークンは一般人にはメリットがほぼ無さそう
日本では米国株を買うことが出来ます。ネット証券に口座を開けば現物株なんて簡単に買えます。値段も時価です。そのため、わざわざこのトークンを買うメリットはほぼありません。利点としては、24時間取引可能という点と1/100の単位で取引可能という点でしょうか。あまりメリットには感じないというのが個人的な感想です。