NFTやFTの税務上の取扱いが更新
こんにちは、会計士の岡内です。
昨日投稿した記事ですが、4月1日に国税庁から最新のタックスアンサーが公表されました。やはり、国税庁内部でも議論になっていたようです。
前回の記事は3月下旬に執筆しており、まさかのニアミスです。エイプリルフールと言ってよ・・・
役務提供などによってNFTやFTを取得した場合
タックスアンサーによると、役務の提供などによりNFTやFTを取得した場合は、事業所得、給与所得、雑所得となります。
報酬などを暗号資産で受け取った場合などの取扱いですね。給与所得はピンと来ないかもしれませんが、従業員に給与として渡した場合です。世間的にはレアケースでしょう。一般の方が気にする点ではありません。
NFTやFTの譲渡と臨時・偶発的な取得
今回のタックスアンサーで、この点がはっきりとなりました。
従来の情報では、暗号資産を取引所で売買すると、原則が雑所得、例外が事業所得という取扱いでした。
しかし、この度、取扱いが変わりました。原則が譲渡所得、例外が雑所得又は事業所得です。
ただし、営利を目的として継続的に譲渡が行われている場合は、従来通り雑所得又は事業所得という取扱いになります。
そのため、取引所で継続して売買している場合、譲渡所得には該当しなくなります。結果的に、実務は従来の取扱いとほぼ変わらないでしょう。
それとは別に、今回のタックスアンサーで臨時・偶発的な暗号資産の取得についても取扱いが明示されました。
こちらについては、一時所得となります。既に売買が行われている暗号資産のエアドロップなどが該当すると考えられます。
売買が行われていない暗号資産のエアドロップやハードフォークは、取得時点で値段が付いていないので、従来通り課税は生じません。売却時に課税されるだけです。
税制の恩恵への道が少し拓かれた
今回の取扱いで、譲渡所得と一時所得の恩恵が受けられるようになりました。具体的には、50万円の特別控除と1/2課税です。
譲渡所得において、5年超保有しているものを譲渡した場合は長期譲渡所得になります。それ以外は短期譲渡所得です。そのため、利益が出た場合は50万円を限度に差し引くことが出来ます。しかも長期譲渡所得の場合、そこからさらに1/2を乗じた金額が課税される所得となるため、長期間保有している場合はかなり有利です。
また、臨時・偶発的にNFTやFTを取得した場合にも、50万円の特別控除と1/2課税の恩恵が受けられます。
とはいえ、譲渡所得や一時所得に該当するようなケースは、結構レアなのではないかというのが個人的な感想です。
それよりも、ちょっと気になる点がまだ残っています。
NFTやFTは金銭債権なのか?
ここがちょっと気になる点です。
譲渡所得に該当するには、『譲渡所得の基因となる資産』でなければなりません。通達によると、この資産から金銭債権は除かれます。
(譲渡所得の基因となる資産の範囲)
33-1 譲渡所得の基因となる資産とは、法第33条第2項各号に規定する資産及び金銭債権以外の一切の資産をいい、当該資産には、借家権又は行政官庁の許可、認可、割当て等により発生した事実上の権利も含まれる。
そのため、NFTやFTが金銭債権であるとすれば、その譲渡は雑所得又は事業所得になります。
実際、タックスアンサーにもその記載があります。
(2) NFTやFTを譲渡した場合
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当する場合(その所得が譲渡したNFTやFTの値上がり益(キャピタル・ゲイン)と認められる場合)は、譲渡所得に区分されます。
(注)NFTやFTの譲渡が、営利を目的として継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分されます。
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合は、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分されます。
現状、NFTやFTが金銭債権なのかどうかというのは、実務家や学者の間でも議論になっているようで、予備的に記載しているのではないかと考えられます。
エルサルバドルのせいで理論がややこしくなっている?
何故いきなりエルサルバドルという日本であまり馴染みの無い国名が出てくるかといえば、この国がビットコインを法定通貨にしているからです。
そのため、ビットコインは米ドルと同じで外国通貨ということになります。
民法上、外国通貨を金銭に含めるかは議論があるようですが、ビットコインが金銭であると主張するのは分かる気がします。
ただ、債権なのかというと、これまた議論があるようです。
税法上の理論構成の過程において、ここが新たな論点になっているような気がします。以前、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にすると発表した際、税務上の思考実験をして色々と考えた記憶があります。
ただ、とりあえずは国税庁が発表しているタックアンサーや情報を元に実務は動くので、しばらくはこれで進むということになりそうです。
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