簡易キャッシュフロー
こんにちは。会計士の岡内です。
お盆も終わり、落ち着いた感じになりました。皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
簡易キャッシュフロー
簡易キャッシュフローとは、損益計算書の利益に減価償却費等を調整して計算した、事業から得られたキャッシュの概算値のことです。
以前のタックスシールドの記事で、PLベースからキャッシュフローを計算している部分があります。気付いた方もいらっしゃると思いますが、これって簡易キャッシュフローと同じです。この時の記事では、実際のキャッシュフローと簡易キャッシュフローが一致する例題になっています。
この簡易キャッシュフローですが、金融機関が融資先の決算書から必ずチェックする項目の一つです。現在の要返済借入金(有利子負債-正常運転資本-現預金)÷簡易キャッシュフローが何年分に相当するかをチェックしています。簡易キャッシュフローは、本業で稼いだ1年間のキャッシュの概算値であり、その稼ぎをもってあと何年で借入金を完済出来るかをチェックして、融資先の返済能力を見ている訳です。この計算式の結果算出される年数を、『債務償還年数』と言います。
簡易キャッシュフローの計算式は、『税引後利益+減価償却費』ということもありますが、融資先の業種や金融機関によっては、『経常利益+減価償却費-法人税等』だったり、ここに貸倒引当金などの各種引当金などを調整して計算することもあります。
この債務償還年数の目安は、一般的に10年と言われており、10年を超えると注意すべき融資先ということになります。
債務償還年数10年超の場合はどうするの?
特殊な業界であったり、特別な事情があって10年を超えている場合は別にして、特別な理由も無く過去数年に渡って10年を超えているような状況であれば問題と言えます。10年超というのは、商売の稼ぎに対して借入が過大であるという指標になります。
そのため、財務分析等を行って、稼ぎ方の効率が悪いのか経費が過大なのかといった問題点を洗い出す必要があります。営業利益は十分な黒字を計上しているけれど、支払利息が過大で経常損失になっている場合、早い段階で事業再生に取組むべきでしょう。
ただし、近年は債務償還年数が12年や13年でも大して問題にしない金融機関は多いです。
簡易キャッシュフロー≠営業活動によるキャッシュフロー
ところで、3月決算を仮定して皆さんに質問です。損益計算書に計上されている売上や仕入は、3月に発生したものが含まれていると思います。しかし、その入金や支払いはいつ行われますか?
3月中に行われますか、それとも翌月以降に行われますか?
いつもニコニコ現金払いの商売をしていない限り、締め日や手形の関係で、決算の翌月以降になることが多いですよね?
ここで話しを戻しますと、簡易キャッシュフローは損益計算書の利益から儲けで稼いだキャッシュの概算値を計算しようとしています。だから、決算の翌月以降の入出金なんて関係ありません。
これに対し、キャッシュフロー計算書は、期首から期末(3月決算なら4月1日から3月末日まで)のキャッシュの増減を把握するものになります。
そのため、簡易キャッシュフローとキャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローは通常一致しません。
何故なら、例えば4月上旬の入金や支払いには、前期の3月以前に発生した売上の入金や仕入代金の支払いが含まれているのが普通だからです。
簡易キャッシュフローと営業活動によるキャッシュフローが大きくズレるのはよくあるので、簡易キャッシュフローだけ又は営業活動によるキャッシュフローだけで経営状況を判断するというのは注意が必要です。