流動性マイニングにおける変動損失
こんにちは、会計士の岡内です。
5月も終わりに近づき、夏の足音が近づいています。今年の夏は一体どうなるのでしょうか。
先日、DeFiとDEXについて個人的に勉強した記事をアップしましたが、今回はその時に省いた変動損失(インパーマネントロス)について書きたいと思います。自分なりの理解を書きたいと思います。
流動性マイニングにおける変動損失(インパーマネントロス)とは
流動性マイニングにおける変動損失(インパーマネントロス)とは、プールに投入した仮想通貨の経済的価値がそれぞれの仮想通貨の価格の変動によりその価値が減少することを言います。これは、流動性マイニングの仕様のため、避けられません。ちなみに、仮想通貨それぞれの価値に変動が無ければ損失は生じません。
具体例が無いと全くもって理解できないはずです。特にプラス側に変動しても損失が発生するなど、今までの考え方からすれば不可解すぎます。そこでETHとUSDTを使って解説します。ちなみに、USDTは米ドルに連動する仮想通貨です。
1ETH=2,500USDTとして計算を進めましょう。
流動性マイニングに1ETHと2,500USDのペアを投入するとします。
この時、流動性マイニングのルールとして、
というものがあります。1ETH:2,500USDTのペアをプールに投入するということは、1×2,500=2,500が定数ということになります。この後、1ETHが2,900USDTになったとします。この場合の計算結果は以下の通りです。
1ETHは√(2,500÷2,900)=0.9284766…ETHへと減少
2,500USDTは√(2,500×2,900)=2,692.5824035….USDTへと増加
もし現物で1ETHと2,500USDTを持っていたとしたら、5,000ドル相当の経済的価値が5,400ドル相当へと増加していました。しかし、流動性マイニングの結果、経済的価値は5,385.16USD(0.9284766×2,900+2,692.5824)相当額までしか増えていないことになります。この約15ドルの差額が変動損失となります。残る問題はこの約15ドル分を手数料収入でカバーできるかどうかです。
上記はETHが値上がりした場合の計算ですが、逆に値下がりした場合はどうなるのでしょうか。
1ETHが2,100USDTになった場合を計算してみます。
1ETHは√(2,500÷2,100)=1.091089…ETHへと増加
2,500USDTは√(2,500×2,100)=2,291.287847…USDTへと減少
変動後の経済的価値は4,582.28ドル(1.091089×2,100+2,291.287847)相当額となります。現物で保有していたら4,600ドル相当額なので約17ドルの損失となります。
値下がりすると損失幅が大きくなる
上記の計算例から分かる通り、変動率は同じ16%でも値下がり方向への変動は損失幅が大きくなります。これは感覚的に理解に苦しむかもしれませんが、そういうものです。仕様なので諦めてください。だからこそ、手数料として何らかの仮想通貨が貰えるというルールになります。
この手数料として貰える仮想通貨が大きく値上がりすると見込んで、様々な人がこの流動性マイニングに参加しているようです。なんといいますか、凄い仕組みを考える人もいるものだなと感心してしまいました。
なお、当事務所では、取引履歴等から損益計算を行うサービスは現在提供していません。ご注意ください。