副業収入は結局事業所得?
こんにちは、会計士の岡内です。
そろそろひんやりした日が増えてきて、秋も深まってきたと感じますね。
さて、今回は夏頃に話題になった、副業収入は雑所得扱いの改正について書きたいと思います。
副業収入が300万円以下は雑所得?
国税庁が8月に『特に反証の無い限り300万円以下の副業は雑所得にする』という改正に関するパブリックコメントを募集しました。
これは元々、常識的に事業と称するに至らないような納税者が、節税スキームとして利用していたことに対応する改正でした。特にコロナ禍以降、副業が政府から奨励される流れになっており、その観点からも改正の必要性があったと言えます。
事業所得には、青色申告制度というものがあり、青色申告特別控除、損失の繰越控除、損益通算などの特典があります。特に損益通算は、給与所得などの他の所得と事業所得の赤字を相殺して所得を減らし、所得税の額を下げるという効果がありました。そのため、とりあえず副業で赤字の事業を展開し、給与所得の収入とぶつけて税金の還付を狙うという事例が散見されました。
これが問題となった節税スキームの内容です。
しかし、これは前提条件として、常識的に副業が事業と称するに相応しい程度である必要があります。通常はここをクリアすることが難しく、結局税務調査で修正申告という流れになるわけです。
パブリックコメントで内容変更
この改正案ですが、8月に意見募集を行ったところ、7千件を超える意見が届いたようです。これはSNS等でかなりの反響があり、いわゆる作家さんや零細事業者、実務家などから意見が多かったものと考えられます。内容的には、『反証の範囲や内容が不明確』などのようです。
この結果を受け、国税庁は10月7日に内容を修正した改正を行いました。内容は以下の通りです。
- 事業所得への該当性は社会通念で判断
- 帳簿書類の保存
- 収入金額300万円以下且つ主たる収入の10%未満は雑所得
一つ目は、従来からあるもので、常識的にそれが事業かどうかで事業所得を判断するというものです。過去の判例から、営利性や有償性、継続性、反復性などの諸々の事情を総合的に勘案して事業と称するに至るかどうかを判断します。
二つ目は今回の改正で示された新しい項目で、帳簿書類の保存が求められています。そもそも、事業なのだから帳簿書類はあって当たり前です。無い方がおかしいです。
三つ目も新しい項目ですが、これが一つの判断基準の目安になります。収入金額300万円以下且つ主たる収入の10%未満は事業というより副業でお小遣い稼ぎという判断ですね。お小遣い稼ぎだから雑所得という扱いです。ただし、これに該当しないからと言って、即事業所得という判断にはなりません。やはり一つ目の常識的に事業所得かどうかという観点が最も重要です。
結局は常識的に事業かどうか
色々と書いていますが、結局は常識的に事業かどうかが重要です。ここには解釈の余地があり、微妙な事例だと判断が分かれるかもしれません。
時々、上記の節税スキームで修正申告という報道を目にしますが、中途半端なことをするのは止めましょう。
そういうことをするなら、ちゃんと専門家に相談して決めた方がいいですよ。