相続税法上の時価
こんにちは、会計士の岡内です。
台風が来るたびに、秋の足音が近づいてきますね。そろそろ長袖ネクタイの季節になってきました。
さて、今回は時価についで考えたいと思います。
時価とは何か
時価とは、公正な評価額であり、取引を実行するために必要な知識をもつ自発的な独立第三者の当事者が取引を行うと想定した場合の取引価額をいいます。
教科書的には上記の定義が時価になるわけですが、税務上では、法人税法上の時価、所得税法上の時価、相続税法上の時価の3つの時価が存在します。
よく問題になるのが、事業承継時の株価とその譲渡価額、相続時の不動産評価などですね。この時価ですが、売手と買手が個人なのか法人なのかで異なることが知られています。
今回は相続税法上の時価の話しなので、互いの時価がぶつかり合う話しは省略します。
時価がひっくり返った
実務上、例えば土地や建物の相続税法上の時価は通達の定めに従って計算します。統一的画一的に処理するためには、この通達がある方が課税する側もされる側も都合が良いのです。
しかしながら、先般、この時価の判断が覆る判決が最高裁で出されました。
具体的には、通達の定めによる評価方法で算定された時価でなく、それ以外の方法で算定した時価が正しいという判決です。税法でよくある定めなのですが、『著しく不当な場合は~』というものが今回は適用されています。いわゆる財産評価基本通達6項の適用です。
「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」
端的にいえば、行き過ぎた相続税対策を行った納税者に対して否認に動いた事例になっています。路線価を用いた時価と不動産鑑定評価に約4倍の乖離があったようです。
乖離が酷すぎて、著しく不当という判断が出て否認され、最高裁まで争って国側勝訴という判決に至っています。
結局時価とは何なのか
納税者側は通達の定めに従って時価を算定し、申告を行いました。しかし、この時価がひっくり返されてしまいました。
そのため、実務家の間でも、どの時価を用いればよいのか疑問が出てきてしまっています。
今までであれば、実務上は通達の定めに従って路線価で評価するなどすれば良かったわけです。しかし、先般の判例でその時価が必ずしも認められるわけではないということが判明しました。
通達の定めではない時価を用いる場合の目安が示されているわけではないので、職業的専門家としてどれを用いるべきか判断しなければなりません。そのため、その時の時価は個別に十分な検討を行い、専門家としての重要な判断が求められることになるでしょう。