仮想通貨の法改正動向
こんにちは、会計士の岡内です。
梅雨になってジメジメしてますね。とはいえ、今年も半分が終わりですし、帯月は参院選も控え、慌ただしい夏になるのでしょうか。
さて、今回は暗号資産(仮想通貨)の税制が変わりそうなので、それを記事にしたいと思います。
暗号資産は分離課税になるか?
現在、金融庁内では、暗号資産の法的な位置づけの整理が進められています。適用法令を現行の「資金決済法」から「金融商品取引法」へと移行させ、その後に税制を見直すという流れで議論が進んでいるようです。以下では、現行制度と検討中の新制度について比較します。
現行制度:暗号資産は「雑所得」
日本の税制においては、ビットコインなどの暗号資産による売買益は「雑所得」として課税されます。この雑所得は、給与所得や不動産所得などと合算される「総合課税」の対象となり、税率は住民税を含めて最大で約55%に達します。
また、株式などと異なり「損益通算」や「繰越控除」が認められていないため、暗号資産で生じた損失を他の所得と相殺等することができません。そのため、高税率と損益通算の制限等が、国内の個人投資家にとって大きな負担となっています。
検討中の制度:分離課税への見直し
現在の議論では、株式と同様に「申告分離課税(税率約20%)」へ変更することが主な論点となっています。これが実現すれば、暗号資産による利益には一律の低税率が適用され、他の所得とは切り離して課税されることになります。
さらに、株式と同じように、損失の繰越控除や損益通算が認められる可能性もあります。これにより、投資家にとっては税務上の柔軟性が高まり、より安定的な運用が可能になるでしょう。
実務上の影響
もし改正が実現すれば、申告実務に大きな影響が生じます。特に個人投資家にとっては、税率の引き下げにより、長期保有していた暗号資産の売却が加速し、その結果として申告で大きな利益を計上するケースが増えると考えられます。
このとき重要になるのが、「利益の計算方法」です。取引業者側で過去の取得費が正確に管理されていれば問題ありませんが、複数の取引所を利用しながら売買を重ねた場合、取得費の把握が困難になるケースがあります。そのような場合、やむを得ず売却額の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使わざるを得なくなります。
したがって、今のうちから取得費の記録や管理を徹底し、将来の売却に備えた出口戦略を考えておくことが重要です。