加重平均資本コスト
こんにちは。会計士の岡内です。
さて、今回は以前投稿した、タックスシールドの続きの加重平均資本コスト(WACC)について書いていきます。一般の方向けに解説しているので、それなりにかみ砕いた表現や説明をしています。
加重平均資本コスト(WACC)とは
加重平均資本コスト(WACC)とは、調達した資金にかかるコストのことを言います。銀行から調達すれば金利がかかりますし、株主から調達すれば配当等を期待されますよね。これが資本コストです。ただし、実際の資金の調達先は、銀行からの融資や株主からの出資が混ざるのが通常です。そのため、加重平均してコストを計算する必要があります。これが加重平均資本コスト(WACC)です。
ちなみに、WACCは Weighted Average Cost of Capital の略で、発音は『ワック』です。実務上、単に資本コストと言えばこれを意味します。
加重平均資本コスト(WACC)の計算式
加重平均資本コスト(WACC)の計算式は以下の通りです。
慣れた人が見れば、いつもの式ですねって感じですが、慣れない人や数学嫌いな方は一瞬で目を背ける内容です。
rDは利息のことですが、1-tがあります。これは以前にタックスシールドで説明した節税効果です。利息は損金なので税金を減らします。
これに対してrEは株主に対する利益です。配当とかですね。
加重平均資本コスト(WACC)はハードルレートになることが多い
ハードルレートとは、最低限確保すべき利回りのことです。
加重平均資本コスト(WACC)は投資の意思決定において、ハードルレートになることが多いと言われています。これは、WACCを超えない商売は、お金を出した人を納得させられないという考え方に基づくものと考えられます。
当然ですが、お金を調達すると銀行や株主に見返りを出さなくてはなりません。この見返りの平均値が仮に3%とした場合、商売の儲けで還元できた利回りがこれを下回るということは、お金を出してくれた人の期待を裏切ることになります。
平均的に3%の見返りを期待したのに、2.5%しか貰えなかったら、そりゃお金出した人はこう言います。
『あなたに投資するんじゃなかった』、と・・・
だからWACCを超えられない商売は最低限を満たさないため、ハードルレートとして用いられやすいのです。
株主資本コスト(自己資本コスト)はいくらが妥当か?
さて、加重平均資本コスト(WACC)は株主と金融機関への見返りの加重平均だと書きました。
金融機関に対するコストは利息なので、これはメインバンクの金利を使ってしまえば早いです。分かりやすいですね。
では、株主に対する見返りは何%が妥当なのでしょうか?
実はこれ、把握するのはそれなりに大変です。株主資本コストは理論上の計算は出来るのですが、ここでは解説しません。ノーベル経済学賞の理論から始まるファイナンス論が出てきます。興味がある方は、ネットで検索するか専門書で勉強してみてください。
分からないからエイヤで5%や8%でも、ある意味では思い切りがあって良いかもしれません。
投資の意思決定はハードルレートを考えましょう
設備を購入して現工程を効率化するにしろ、新しく事業を興すにしろ、このハードルレートは意思決定における目安です。
無借金経営で且つ家族経営の株式会社なら、株主が1%と思えば1%でも構いません。ただ、『それなら出資と同額をインデックスETFで運用した方がよっぽど利回りが良い』、と主張する方もいると思います。日本の上場株でさえ、配当利回り3%超えとか普通にあるのが現状です。
逆に借入れがある場合で且つ株主としての利益も欲しいという同族会社なら、WACCが4%や5%でも全く不思議では無いでしょう。この低金利時代、自己資本と有利子負債が3:7だったらあり得そうな数字です。
設備投資などの投資の意思決定をする時は、一度そういった視点で検討してみると思わぬ気付きがあるかもしれません。
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