退職金に対する増税
こんにちは、会計士の岡内です。
年末になり、皆さん忙しい頃合いだと思いますがいかがお過ごしでしょうか。
さて、今回は税制改正大綱の草案で、退職金の増税が盛り込まれたので、それについて記事にしようと思います。
退職金に対する増税
現在、退職金は税制上非常に優遇されており、税額の計算式は次のようになっています。
(退職金-退職所得控除)×1/2×税率
今回、政府はこの計算式における退職所得控除の部分を改正しようとしています。
退職所得控除の重複排除
退職所得控除は、勤続年数に応じて増加する計算になっています。具体的には、
・20年まで:40万円×勤続年数
・20年を超える場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
という計算式です。
しかし、複数の企業から退職金を受け取る人や、企業の退職金と個人型確定拠出年金(イデコ)などから退職金を受け取る場合には、それぞれの退職金に対して退職所得控除を満額計算するのは不合理とも言えます。このため、過去に退職金を受け取った場合の「退職所得控除の重複排除」というルールが存在しており、これを俗に5年ルール(場合によっては4年ルール)あるいは20年ルール(場合によっては19年ルール)と呼んでいます。
老後設計が大幅に変わる可能性あり
今回、5年ルールの期間を5年から10年に改正しようとする草案が示されており、概ねこの形で改正が進みそうになっています。
この改正が実施されると、例えば個人型確定拠出年金(イデコ)を60歳で受け取った後、65歳で他の退職金を受け取ると、退職所得控除の重複排除に該当することになり、手取額が大きく影響を受けることになります。
この改正は、中小企業の経営者や個人事業主のみならず、一般の企業勤めの方も含めて大きく影響が出そうです。なぜなら、重複排除を回避するには、追加で5年間の資金計画を立てなければならず、今までの資金計画が大きく狂ってしまう可能性があるからです。
今回の5年ルールの改正が通れば、退職金の受け取りタイミングや額が大きく影響を受けることになります。老後資金の計画を見直さなければならない方も増えると思います。改正後の新ルールに合わせて、資金の積み立てや受け取り時期を調整する必要性を検討しなければならなくなりそうです。
20年ルールは別途健在
上記の5年ルールとは別に、小規模企業共済や企業の退職金を受け取った後に個人型確定拠出年金(イデコ)を受給するパターンもあります。
これ関しては、従前より重複排除期間は20年となっています。インターネット上でも様々な情報があるのでご存じの方も多いはずです。今回、こちらについての大きな改正はなさそうです。