NFTアートの売買は譲渡所得になりうるか
こんにちは、会計士の岡内です。
4月になり暖かくなってきました。新年度になり、新入社員の対応でお忙しい方も多いのでは無いでしょうか。
さて、コロナ禍以降、NFTアートというものがしばしば報道されています。子供が制作したNFTアートが高額で売れたといった感じのニュースですね。それに加えて、先月にはウクライナ危機でウクライナがNFTアートで戦費調達を発表するなど、これでNFTアートを知った方も多いのではないでしょうか。
今回はこのNFTアートの税金について考察したいと思います。
NFTアートは芸術品か暗号資産か?
NFTアートはブロックチェーンの技術を用いたデジタルアートです。デジタルアートなので、実物が手に取れるわけではありません。電子データです。
では、このNFTアートは芸術品なのか、それとも暗号資産なのかといえば、『資金決済に関する法律』の第2条に暗号資産の定義が書かれています。
5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
結論として、第2条第5項第2号から、見た目はアートかもしれませんが法律上は暗号資産ということになると考えられます。
雑所得や事業所得以外の余地はあるのか?
条文からNFTアートが暗号資産であることは分かります。また、国税庁のホームページから暗号資産の売買損益は原則が雑所得、例外が事業所得ということも分かります。
では本当にそれ以外の余地は無いのでしょうか?
すなわち、譲渡所得に該当する余地は無いのかということです。
譲渡所得になるためには、棚卸資産ではない、相当期間にわたり継続的に譲渡していない、1個(または1組)30万円以上などの前提条件があります。具体例は、古くから家にある書画骨董などの芸術品の売却です。
NFTアートは、条文上は暗号資産にはなりますが、デジタルアートでもあります。真贋判定を確実にするために、ブロックチェーン上で管理しているだけに過ぎません。ということは、実態は芸術品であるという理屈も成り立ちそうです。
そう考えれば、実態から譲渡所得であると主張できる余地はありそうです。
実務は雑所得または事業所得
(2022年4月1日にタックスアンサーが公表されました)
国税庁から公表されている取扱いの通り、実務はこれに沿って行われています。
そのため、理屈としてアートなのだから譲渡所得であるという主張は、なかなか大変ではないかというのが個人的な見解です。
もちろん、個人の見解であるため異なる結論になることもあると思います。しかし、今現在の実務の流れからすれば、譲渡所得としての申告は難しそうです。
追記
2022年4月1日に国税庁のタックスアンサーが更新されました。当記事の執筆は3月下旬に行われています。
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