固変分解って何?
こんにちは。会計士の岡内です。
さて、今回は固変分解について簡単な記事を書きたいと思います。
初歩的な解説になりますので、会計士や日商簿記の1級や2級ホルダーの方向けではありません。
そもそも、固変分解とは何か?
固変分解とは、売上原価や販管費に含まれる各費用が、売上高に連動して増減する変動費なのか連動しない固定費なのかに分ける作業を言います。例えば、同じ売上原価でも、小売業は通常変動費ですが、製造業は外注費や賃金給与などが含まれるので変動費と固定費が混在します。
では、何故わざわざ固変分解をするのかと言えば、損益分岐点売上高を計算するためです。損益分岐点売上高とは、損益がトントンになる売上高のことを言います。
固変分解の方法
では、固変分解はどうやって行うのでしょうか。
一般的には、決算書を目で見て固定費と変動費を分類する『費目別精査法』とエクセルを使った『最小二乗法』の二つが選ばれます。
費目別精査法は、決算書があれば簡単に電卓で計算できますが、分類がザックリとしがちなので精度が低いという欠点があります。水道光熱費などは、基本料金部分と従量料金部分に分かれているのが普通ですし、段階的に基本料金が増加するモノだってあるでしょう。また、人によって変動費と固定費の分類が異なることもあります。そのため、精度が低いと言われるのです。
逆に最小二乗法は、過去のデータから回帰直線を算出する方法です。Y=0.5X+○○○円みたいな形で計算されます。この場合だと0.5が変動費率で○○○円が固定費です。Xに売上高を代入すれば総コストであるYが求められます。過去データからの数値なので、概ね正しかろうという数値が計算されます。しかし、これを計算しようと思えば、エクセルに数年分のデータを入力し、関数を使って計算する必要があります。パソコン嫌い、エクセル嫌いの人にはハードルが高いです。
固定費÷限界利益率=損益分岐点売上高
費目別精査法で変動費と固定費を分けたら、変動費÷売上高=変動費率になります。
最小二乗法なら計算された数値が変動費率になります。
変動費率が計算されれば、売上高に対して変動費はいくらになるかが分かります。では、その売上高から変動費を引いて残った利益はなんでしょうか?
これは、『固定費を回収するための利益』と言えます。一般的に限界利益と呼ばれます。
売上100円に対して変動費率80%とすれば、20円が限界利益です。限界利益÷売上高=限界利益率になります。この限界利益で人件費や家賃などの固定費を払うというわけです。
その結果、利益が余れば黒字、足りなければ赤字です。逆に言えば、限界利益で固定費がちょうど全て回収されれば、損益がトントンになります。
このトントンになる売上高の計算式が、 固定費÷限界利益率=損益分岐点売上高 となるのです。
本当に固定費は変らないのか?
費目別精査法にしろ最小二乗法にしろ、過去データから固定費と変動費を分離して計算しています。それを前提に損益分岐点を計算するわけですが、本当に売上高が増減しても固定費は変らないのでしょうか?
現実としては、売上高が伸びれば設備や人員を増やす必要があるのではないでしょうか?
そうなれば、新しい従業員に対する人件費や設備のリース代などの固定費も変りますよね。そのため、固変分解をして損益分岐点売上高を計算するにしても、売上高増に伴う人員増なども織り込まないと意味がありません。
よくあるのが、売上高増に伴って固定費を調整しない事業計画です。右肩上がりの計画の場合、凄い勢いで利益率が改善します。そのため、これはちゃんと調整を加えないとおかしなことになります。注意しましょう。
簡単なものでよいので事業計画を作りましょう
中小企業や個人事業の経営者の中には、3年程度の中期計画が無いというのはザラです。しかし、簡単なものでも作ることをオススメします。
なぜなら、それがあるだけで人の意識が変るからです。
目標を立てたという事実があれば、人間は意外とそれを意識して行動します。そのため、簡単なものでいいので事業計画はあった方がいいのです。