賃上げ促進税制による繰越控除
こんにちは、会計士の岡内です。
関西でも梅雨明けとなり、盛夏という感じがしてきました。暑さに気をつけて頑張りましょう!
賃上げ促進税制
賃上げ促進税制とは、従業員の給料をアップしたり、教育訓練を実施してスキルアップをさせたりするなどの施策を事業者が実施した時に認められる税制上の特典です。具体的には、一定割合の税額が控除(免除)されます。
今までは、中小企業者向けと大企業向けの2本立てで運用されており、利益が出ているところだけがこれを使うことが出来ました。
しかし、日本での黒字法人の割合は3割~4割前後であり、赤字の法人が多いという実情があります。赤字であれば、この税制を使う余地は無いので、赤字法人からすると賃上げをするインセンティブが無く、意味のある税制ではありませんでした。
税制改正で中小企業は繰越控除が可能に
そこで、令和6年の税制改正において、赤字法人でも税額控除を使える余地を出そうということで、繰越控除が可能となる改正が施されました。
従来、賃上げ促進税制では赤字や利益が少なすぎて使い切れなかった税額控除の額を、翌期以降に繰り越すという制度はありませんでした。要するに、毎期、単年度で税額控除額を計算して使える分だけ使うというものだったわけです。
これだと、赤字法人や、赤字と黒字を行ったり来たりしている法人にとっては、とても使いにくい税制でしかありません。これを解消するため、今回の改正で中小企業に限って繰越控除が可能となりました。
期間は5年間なので、それなりに使いやすいものになったと思います。
中堅企業向けが新設
賃上げ促進税制において、従来は中小企業者向けと大企業向けの2本立てで運用されていましたが、今回の改正で中堅企業向けが新設されました。要するに、大企業と中小企業の間に居た企業向けに作られた部分です。主にグループ企業の子会社や孫会社などがターゲットになっています。
給与の集計などの手間に注意
賃上げ促進税制を適用しようとする場合、当然ですが従業員の給与額の集計や教育訓練の費用などを集計する必要があります。
給与はエクセルに出力して集計すれば簡単でしょうが、教育訓練の費用は集計に手間取るかもしれません。そのため、教育訓練の費用は別途エクセル等で管理しておくほうが無難でしょう。