与党税制改正大綱
こんにちは、会計士の岡内です。
ついに2022年も終わりになります。皆さん、今年はどういった1年だったでしょうか?
コロナも落ち着いて、以前に近い日常が訪れていますが、来年こそ、コロナ前の生活に戻れることを期待しています。
与党税制改正大綱発表
さて、12月16日に与党の税制改正大綱が発表されました。この中には、NISAの拡充の他、資産税の改正なども盛り込まれています。
例年、この時期に税制改正の方針が発表され、これに伴って各種専門誌でも新着記事がバンバン更新されます。気になる項目をいくつかピックアップして、今回は投稿したいと思います。特に、資産税に関して大きな改正が入るので、実務上注視しておく必要があります。
贈与税の持ち戻しが3年から7年へ
暦年課税において、相続人が被相続人から贈与によって取得した財産の持ち戻し期間が改正されます。従来は3年間が相続財産に加算されていましたが、これが7年間に延長されます。
相続税の申告に際しては、相続人が過去3年間贈与で受け取った現金などをヒアリングしますが、この期間が7年間に延長されることになります。そのため、過去の資料の調査範囲が従来より広がるため、手続きに時間を要することは間違いないでしょう。何なら、そんな前の贈与税申告書の控えも廃棄している方も相当程度出てくると思います。改正は令和6年1月1日以降の贈与から適用開始を予定していますので、非上場株式も含めて財産の移転を検討されている方は内容の検討が必要になります。
これは実務に大きく影響すると思います。
相続時精算課税の改正
以前から存在していましたが、使い勝手が悪すぎて存在意義を失いかけていた相続時精算課税が、大幅な改正を経て使い勝手が一気によくなります。
大綱を読んでいて、ちょっとビックリしました。どうせお茶を濁すような改正なのだろうと高をくくっていたので。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
長々と書いていますが要するに、『暦年課税の110万円控除も認めた上で相続時精算課税を適用できるようにします』、と書いています。しかも相続時は110万円を引いた後の残額を加算と書いてあるので、暦年課税とのハイブリッドになりました。今までは何らかの事情で相続時精算課税を使いたいという方もいましたが、暦年課税を失うデメリットとの比較で利用を諦めるという人が大半でした。
しかし、改正後はハイブリッドになるので利用へのハードルが一気に下がるでしょう。ただ、比較的若い方へ10年~15年計画で贈与を繰り返す場合、相続発生時のために贈与に関する資料は必ず死ぬまで保管しておかないと、後で苦労することになります。この辺は、マイナンバーで資料収集がしやすい制度にしてくれないとちょっと大変ですね。
NISA拡充
日本版ISA、すなわちNISAが拡充されます。
従来は、一般NISAが年間120万円、つみたてNISAが年間40万円で、どちらか一方のNISAしか選べませんでした。
しかし、これが一般NISA240万円、つみたてNISA120万円を1年間の上限に、合計1800万円までかつ非課税期間も無制限になります。
これは大きな改正です。個人的に、上限を1800万円に設定したのはかなりの悪手だと思います。富裕層うんぬんと言っていますが、富裕層にとって年間120万円や限度額1800万円なんて大した金額ではありません。正直あってもなくても気にするレベルでは無いので、そんなものは無視してつみたてNISA120万円/年を無期間無制限で導入した方がよっぽどシンプルで分かりやすい制度でした。
ただ、今回の改正では一般NISA枠とつみたてNISAが共生することになったので、iDecoと同様にスイッチングが一部で可能になりそうです。要するに、為替ヘッジ無しの米国投信を為替ヘッジ有りの米国ETFへと組み替えるといったことが年間240万円を限度に可能になりそうということです。
今年は恐ろしい勢いで円安が進み、150円台まで行った後、今は133円くらいになっています。そのため、今年は為替ヘッジ無しから為替ヘッジ有りへのスイッチング需要が相当あったと思います。iDecoではそういうスイッチングが可能ですが、実行に1~2週間くらいかかるという大きな欠点があります。改正後のNISAでは、このタイムラグの無いスイッチングが可能になりそうです。
個人的な結論として、今回の改正は、金融資産3,000万円未満のいわゆるマス層の方に大きな恩恵をもたらし、老後の資産設計に有効なものになると思います。